物価目標0%超の釈明に追われた立憲民主党の野田代表(写真:共同通信社)物価目標0%超の釈明に追われた立憲民主党の野田代表(写真:共同通信社)

 立憲民主党が選挙公約として掲げたインフレ目標を「2%」から「0%超」に修正するという案に、金融市場がざわついている。現在、2%前後の物価上昇率を0%近傍まで押さえ込むためには追加利上げなどが必要になるため、市場ではタカ派過ぎるという反応も少なくない。この立民の公約をどう評価すべきなのだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

インフレ目標「0%」超をいかに解釈すべきか

 立憲民主党が次期衆院選の公約の中で「新しい金融政策への転換」と銘打ち、日銀の物価安定目標を「2%」から「0%超」へと変更するとともに、政府・日銀の共同目標として「実質賃金の上昇」を掲げる方針を提示したことが一部で注目されている。

 この方針をどのように評価するかという問い合わせを複数いただくため、筆者なりの所感を提示したいと思う。結論から言えば、良い部分と悪い部分がある。

 先に悪い部分から言えば、「2%」を「0%超」に修正するという情報発信は不必要に日銀のタカ派色をアピールする恐れがある。もちろん、1.8%や1.5%でも「0%超」なのだから、過度な引き締めを意味するわけではない。

 しかし、「2%」を「0%超」にするという字面が持つインパクトは大きい。

 市場参加者、ひいては市井の人々にとって、金融政策運営の良し悪しは残念ながら第一印象で決まりやすい。表現として単純過ぎるため、意図しないタカ派解釈から想定外の円高・株安を惹起しかねないだろう。現に、この方針については「タカ派的過ぎる」との批判が非常に多い。

 この点、泉健太・前立民代表はX(旧Twitter)上で、「『0%近傍』という意味ではなく、『プラス領域』という意味」と釈明に追われている。

 また、同党におけるネクスト財務金融相である階猛議員も、「明らかな誤解。我々は物価0ではなく実質賃金プラスを目標にしている」「物価0%を目指すことはなく、実質賃金プラスなら物価2%でも何ら問題ない」とやはりX上で情報発信している。

 さらに、野田佳彦代表も日本経済新聞などのインタビューで、「物価上昇率がゼロを下回ってはいけないが、デフレ脱却に向けて柔軟性があった方がいいとの趣旨だ」と答えている。要するに「2%を無理やり目指すことはしない」という意図が透ける。表現はまずいが、柔軟性を意識しているのは良い部分である。

 かねて言われていたように、現在の物価目標に関する政府・日銀の共同声明(アコード)がはらむ最大の問題点は、2%目標について「できるだけ早期に実現することを目指す」という部分である。