YCCに象徴される無理筋な政権運営の遠因

 この「できるだけ早期に」という概念が退くに退けない日銀の状況を創り出し、イールドカーブ・コントロール(YCC)に象徴される無理筋な政策運営の遠因になったのは間違いない。

 このアコードが、黒田体制の誕生とともに「2年間でマネタリーベースを2倍にしてインフレ率を2%にする」という期待(というより誤解)に働きかける政策運営につながっていくのである。

 しかし、そもそも物価目標達成までのスピード感を盛り込む事例は海外にはない。この点、それが「0%超」という表現かどうかはさておき、野田代表の言うように「デフレ脱却に向けて柔軟性があった方がいい」のは間違いない。

 そもそも、過去2年以上にわたって消費者物価指数(CPI、総合ベース)が2%以上で推移しているのに(図表①)、いまだにデフレ脱却が認められておらず、利上げペースも緩慢なのだから、実際のところ、日本のインフレ目標は相当の柔軟性をはらんでいる。そうであれば適切な表現に変えた方が良い。

【図表①】

日米欧CPIの推移(%、前年比、総合)
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