おわりに
筆者はベルリンの壁の崩壊のあった1989年から1992年の間、防衛駐在官として在ベルギー日本大使館に勤務し、NATOを直接、観察する機会を持った。
ここで、あまり知られていないNATOの効能について述べてみたい。
NATOの政治協議のメカニズムは、加盟国間の紛争、例えばギリシャ、トルコのキプロスを巡る対立を封じ込めることができた。
政治協議のメカニズムを持った統合軍事機構は外からの脅威に対して有効であるとともに、内なる脅威に対しても有効である。
冷戦崩壊後の混乱の時期に、国境問題および少数民族問題を有するポーランド、ハンガリー、旧チェコスロバキアの旧ワルシャワ条約機構(WPO)の国々がNATO加盟を希望した理由は、東からの軍事的脅威に対する備えとともに、NATOのかかる機能、すなわち内なる脅威に対しての効能を期待してのことであるといわれている。
脅威の消滅が必ず同盟の終焉につながるといわれる。
ソ連が崩壊した時にNATOは解体の危機に直面したが、今も存続している。それは、加盟国が、NATOのかかる機能を信じていたからであろう。
もし、アジア版NATOが創設されたならば、NATOと同じようにかかる機能をものであってほしいものである。