(3)筆者コメント:筆者の考えるアジア版NATO

 上記の2つの論考は約10年前に書かれたものであるが、今日でも有効である。

 筆者も、高坂哲郎氏の論考にあるように、もし米国を加盟国とするアジア版NATOが創設されたならば、日本や米国、オーストラリアなど、民主主義と市場経済という価値を共有する国家群が、中国の軍事的台頭に力を合わせて対抗できると考える。

 しかし、植田氏の論考にあるように、米国の強い主導がない限り、それは実現できない。

 米国は今、QUADやAUKUSといったインド太平洋地域の多国間安保協力の整備に取り組んでいる。

 AUKUSは、メディアでは軍事同盟と呼ばれることがあるが、現在は安全保障パートナーシップである。

 しかし、AUKUSは将来、相互防衛義務を持った軍事同盟に発展する可能性を持っている。

 アジアは様々な人種、民族、言語、文化、風習、政治体制、宗教等が混在し、域内の共通項が少ない。

 従って、NATOのように広範な地域の様々な国々を取り込んだNATOの創設はできないと筆者は見ている。

 筆者は、将来はAUKUSを中核として、同じファイブアイズのメンバーであるカナダ、ニュージーランド、さらに日本など、自由や「民主主義」「法の支配」といった共通の価値観を持った国々が参加する軍事同盟が創設されることを願っている。

 これがアジア版NATOと呼ばれるものになるであろう。