自民党の森山幹事長らと協議後、党本部を出る石破首相=10月5日夜(写真:共同通信社)自民党の森山幹事長らと協議後、党本部を出る石破首相=10月5日夜(写真:共同通信社)
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(河野克俊:元統合幕僚長)

「アジア版NATO」実現には憲法9条改正が絶対条件

 石破総裁が、総理に就任する前の前回の寄稿では、石破総理が提唱されている主として「アジア版NATO」の問題点を指摘したが、今回はさらに論議を深めていきたいと思う。

 私は、「アジア版NATO」には実現性以前の問題として反対だが、「アジア版NATO」という「集団的自衛体制」を構築するためには、安全保障法制で認められた「限定的集団的自衛権の行使」では不十分である。

「限定的集団的自衛権」が行使できる要件は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とされている。これはほぼ個別的自衛権の範疇に近い概念だ。

 内閣法制局は、これ以上集団的自衛権に踏み込むのであれば憲法改正しかないとの見解である。したがって、石破総理が提唱されている「アジア版NATO」構想を実現するためには憲法9条の解釈変更ではなく改正が絶対条件となる。

 そのため議論の順番としては、まず憲法9条とりわけ「9条2項の削除」を実現して、その後に「アジア版NATO」の議論に進まなければならないが、そのアプローチの議論が欠落している。

 また、石破総理は総裁選中に憲法改正について「自衛隊明記」の自民党案でよいとのスタンスに見解を修正された。これでは「アジア版NATO」との整合性がとれない。

 次は、石破総理が総裁選期間中に沖縄で打ち上げられた「日米地位協定の改定」だ。