日米地位協定「言ってみただけ」はあまりに悲しい

 地位協定は、日本が安全保障の観点から在日米軍を受け入れた時点で日本に存在する米軍基地、軍人等をどう位置付けるかを規定するためには必然的に伴うものであり、日本だけが特別ではない。現に米国は40カ国以上の国と地位協定を結んでいる。

 その意味で、日米地位協定の改定は、平等性、双務性の問題とは切り離して、あくまで外交・行政事務の観点から不具合を是正するということで進めて行くべきなのだ。

 それでも地位協定の改定には、米国は否定的であり、「パンドラの箱」を開けることになるという見方もある。少なくともそうたやすいことでないことだけは確かだ。

 そのことを石破総理は十分踏まえた上で主張されたのであれば、政治家の信念として受け止めるが、沖縄で打ち出されて以降、自民党の選挙公約には字句としては入っているが、今のところ石破総理自らの言葉で言及されることはない。沖縄の人々の期待が高まっているだけに石破総理自らのメッセージが必要なのではないだろうか。

 いずれにしても実質的に総理を選ぶことになる自民党総裁選は、各候補が国の進むべき方向を訴え、それを踏まえて自民党員が判断されたはずである。

 石破総理が総裁選挙中に強調された「アジア版NATO」も、「憲法9条2項削除」そして「日米地位協定改定」も、「米国への自衛隊訓練基地設置」も、現時点ではすべて封印されている。

 賛否は置くとして政治家として「一千万と雖も吾往かん」の覚悟で言われたのであることを願うが、総裁選の時に注目を引くために、ただ言ってみただけであればあまりにも悲しいし、国民は立つ瀬がない。

 特に、「日米地位協定の改定」については、沖縄の人々の気持ちをもてあそぶ結果にもなりかねない。