2011年5月、アイルランドを訪問したエリザベス女王(写真:ロイター/アフロ)
拡大画像表示

(国際ジャーナリスト・木村正人)

女王ほど記録された人生を送った人物はいない

[ロンドン発]ユーモアやパロディの効いた風刺で定評のある英批評家クレイグ・ブラウン氏がマーガレット王女、ビートルズの伝記に続き、世界中で最も愛された君主エリザベス女王(1926~2022年)を巡る挿話を集めた伝記「A VOYAGE AROUND THE QUEEN」(原題)を出版した。

ロンドンの外国特派員協会(FPA)で記者の質疑に応じるクレイグ・ブラウン氏(筆者撮影)
拡大画像表示

  英国にとって君主とはどんな存在かという問いには、「王冠やコロネット(装身具)がなければ、どのようにしてイングランド人とアイスランド人を区別できるのか」という米作家ジョン・アップダイクの答えが一番相応しいのかもしれない。

「人類の歴史上、女王ほど記録された人生を送った人物はいない。96年間、写真に撮られなかった週はほとんどない。長い、長い人生のどんな日でも女王がどこで何をしていたかはすぐに分かる。好むと好まざるとにかかわらず、英王室は私たちの身近な存在なのだ」(ブラウン氏)

 毛沢東、ビートルズ、ダイアナ元英皇太子妃、ドナルド・トランプ前米大統領でも、ある期間頻繁に写真を撮られることはあっても、生涯を通じて女王ほど写真を撮られることはない。人々の記憶には10年前、20年前、40年前、80年前、90年前の女王の姿が刻み込まれている。

1936年、庭でコーギーと遊ぶエリザベス王女(写真:Mary Evans Picture Library/アフロ)
拡大画像表示

 女王の国葬は世界中で約40億人がテレビで視聴したという。地球上の人口の約半分だ。エリザベス女王は空前の影響力を誇った。