6月の参院本会議で可決、成立した改正政治資金規正法。抜け穴批判も残るが、蓮舫議員をはじめ野党の面々は満面の笑み(写真:共同通信社)6月の参院本会議で可決、成立した改正政治資金規正法。抜け穴批判も残るが、蓮舫議員をはじめ野党の面々は満面の笑み(写真:共同通信社)

 政治資金の流れを調べ、告発を続けてきた上脇博之・神戸学院大学法学部教授は、今年6月に参議院本会議で自民・公明両党などの賛成多数で可決・成立した改正政治資金規正法を「全く評価できない」「ほとんどマイナス点に近い」と厳しく批判する。

 法改正はなぜ無力なのか。政党や政治家はいかに巧みに法の網をくぐり抜けるのか。公益財団法人「政治資金センター」理事も務める上脇博之氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

◎前編「政治家はカネが欲しくて裏金を作るのではなく、裏金が欲しくて裏金を作る

──「政党」「政治資金団体」「資金管理団体」「国会議員関係政治団体」「その他の政治団体」など、複数の異なる政治団体について本書の中で説明されています。政治資金の運用において、こうした政治団体はどのように機能・連携しているのでしょうか?

上脇博之氏(以下、上脇):この部分を考える上で、いくつか重要な視点があります。

 まず収入において、こうした複数の政治団体がどんな意味を持つかです。政治団体の性質によって、寄附が受けられる政治団体かどうかが決まります。企業献金を受け取ることができるのは、政党と政治資金団体です。「国民政治協会」は有名な政治資金団体です。

 どの政治団体の支出かということが次の重要な点です。支出をする時に、すべての支出の明細を書く必要はなく、一定の要件があります。

 最も要件が厳しいのは「国会議員関係政治団体」です。1万円超えの支出をした場合「いつ」「誰に」「何の目的で」「いくら支出したのか」収支報告書に記載しなければなりません。ところが、国会議員関係政治団体以外の政治団体、たとえば「その他の政治団体」の場合、明細を書くのは支出の額が5万円以上の場合だけでいい。

 支出は、政治活動費と経常経費に大きく分かれます。経常経費とは、人件費、事務所費、光熱水費、事務費などです。この中では、人件費が最もブラックボックスで、国会議員関係政治団体であっても人件費だけは総額だけを記載すれば大丈夫になっています。

 国会議員関係政治団体は人件費以外の部分で1万円を超えた内容は明細を書かなければなりませんが、「その他の政治団体の場合」人件費以外の項目も総額だけの記載でいい。

「その他の政治団体」が明細を書かなければならないのは、経常経費を除いた政治活動費です。組織活動費、寄附金、宣伝費などがこれに該当し、5万円以上の支出は記載が必要です。

 国会議員関係政治団体はさらに、1万円未満であっても、少額領収書の情報公開請求制度があり、国民から請求がある場合、総務大臣や選挙管理委員会から「保存している1万円以下の部分に関しても領収書を開示してください」と頼まれる。

 ですから、国会議員関係政治団体は透明度が高く、「その他の政治団体」は低い。この点でいうと、政党も「その他の政治団体」と同程度の透明度です。ただし、国会議員が代表になっている選挙区支部は、国会議員関係政治団体になります。

──透明度の違いを利用して、政党や議員は得をするのですか?