今回の法改正でも争点になった連座制の効果

上脇:最も分かりやすい例は、選挙の時に買収行為が発覚した際に、立候補者が買収で逮捕されなくても、秘書の方など議員と一定の関係にある人の有罪が確定した場合はその議員の当選が無効になり、その選挙区から5年間の立候補が禁止になるというケースです。議員を刑事責任には問えなくても、その議員の議席を奪う。これが連座制です。

 政治資金規正法の改正で、連座制のようなものを導入したと胸を張って語っている議員もいましたが、今回導入されたものは連座制ではありませんし、連座制に近いものでもありません。いわゆる「確認書を書く」というものです。

 これは議員が会計責任者から説明を受け、会計帳簿を見せてもらった上で、内容を理解したらその旨を記す確認書を書くというものです。もし、確認書を書かないで会計責任者が有罪になれば、議員も有罪になる。

 でも、裏帳簿を作って「オレは見ていないことにしろ」「オモテの帳簿だけを見せて説明したことにしろ」と言って、問題になった時に「自分は(オモテの)帳簿を見て確認書を出した」と言えば、議員は罪に問われません。口裏を合わせれば今と変わらないということです。

 これで「連座制に近い」などと言われても、私からすると「ナニ嘘を言っている」という感想です。

 ご質問にもあった「会計責任者の選任及び監督の義務」について、相当の注意を怠った時に罪に問えるという条文があります。問題は、この条文は「選任及び監督」と書かれている。「選任」と「監督」の両方に相当の注意を怠らないと、政治家の刑事責任を問うことができない。

 そこで「選任及び監督」から「選任または監督」に書き変える手があります。こうすると、「選任」と「監督」のどちらか1つでも注意を怠った場合に責任を問うことができる。

 そればかりではなく、会計責任者と議員は両方が会計帳簿を管理して収支報告書を作成することを義務として課したほうがいいと思います。

 もちろん、1年間のカネの流れをチェックするのは大変です。政治家も忙しい。そこで、今は1年間の収支を記載することになっていますが、これを3カ月か4カ月の短い期間にすればいい。短い期間ならば管理できるはずです。

 それでも政治家は逃げると思うので、前述のとおり、「選任及び監督」から「選任または監督」に書き変えるなどして、幾重にも逃げられないように網を張る法改正が必要だと思います。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。