文春リークスには誰でもスキャンダルを持ち込める
博士:文春には「文春リークス」というものがあり、誰もがスクープやスキャンダルを持ち込めるシステムがあります。芸能人がどこかの女性と歩いていたら撮られて、写真が文春リークスへ送られる。誰がそこに情報を送っているかなんて必ずしも分からないのです。
──「週刊文春」を読むと、ある芸能人や政治家が仕事を失うかもしれないほどのスキャンダルが暴かれているのに、ページをめくると、別の芸能人のどこか呑気なエッセイやグラビアを出していたりして、その落差がグロテスクというか、誰かの屍の上で別の誰かが踊っているような印象を受けます。
博士:人の興味というものはそういうところにあるものです。僕はもともと記者になりたかった人間なので、対象を追っていくとか、スキャンダルがなぜ面白いかとかということをどこか本質的に理解しているという感覚があります。
ノンフィクション作家の森功さんが書いた『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』(幻冬舎)という本がありますけれど、齋藤十一という人はおよそ50年にもわたり週刊新潮の編集権を独占して、まさに独裁体制で雑誌を作っていた人です。
彼が部下に「君たち、人殺しの顔を見たくはないのか」と言ったというエピソードは有名ですが、週刊誌というものは人々の好奇心に訴えるものです。
──私は大好物ですね。
博士:週刊誌は確かに人の死体に鞭打つような存在に見えるかもしれませんが、記者がいて、権力を監視して暴走しないようにしているから、僕らは安心して生活することができる。
調べて、裏を取って、権力を監視するコストはとても高くて、何十人もの記者を投じて一つのスクープを取っていく。マスコミも霞を食って生きているわけではないですから、お金が必要なのです。芸能人のスクープは当然必要なものだし、芸能人側は覚悟しないといけない。芸能人はみなし公人で、週刊誌を支えている。
文藝春秋の創業者である菊池寛も言っていますが、週刊誌の底にあるのは、正義ではなく好奇心です。人間の思わぬ生態が明らかになり、好奇心が記者を動かす。
あんな美人な女優の奥さんがいて、家庭を持っているのに、多目的トイレではした金を払ってセックスした好感度タレントがいましたが、「天網恢々疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず)」という言葉もあるように、天は見ているのです。
──「多目的トイレ不倫」は衝撃でした。
博士:また、新谷さんは「優れた記者の条件は、愛嬌と図々しさとマジメさなのだ」とも書いています。これは芸人にもすべて当てはまることです。愛嬌と図々しさとマジメさがない人を世間は許しません。狩野英孝なんてあっという間に許してもらえたでしょ。
松本さんは以前「文春にスクープされたらどうしますか」と聞かれ、「全部その通りです」と書かれたことをすべて認めるとあれだけ言っていたのだから、その通りにすればよかった。
スポンサーがいるので、テレビというビジネスモデルの中では許されませんが、このまま吉本に所属して、吉本の劇場で芸を続けるか、ネットで芸を配信すれば、これまで以上に稼げるのではないかと思います。誰も引退を強要していないし、被害に遭った方々にきちんと謝罪をすれば、死ぬまで芸人でい続けることは可能だと思います。
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長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。