「著名人と指名手配犯は同じだと思う」
博士:『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP)という本を出し、お笑い情報誌「マンスリーよしもと」(よしもとクリエイティブ・エージェンシー)の初代編集長を務めた竹中功さんという方がいます。
吉本タレントの謝罪を仕切ってきた竹中さんは、芸人がいかに問題を起こすかということをよく分かっていました。でも、今の経営陣は権力闘争の末に、こういうジャーナリズムを分かっている方を辞めさせてしまった。
ヤクザも同じですけれど、芸人の世界では師匠から戒めや戒律を習います。たけし軍団も性には奔放だったけれど、松本軍団みたいなことはしません。師匠の教えがあるからです。
NSC吉本総合芸能学院の第1期生がダウンタウンです。彼らがリーダーだから、彼らがルールを作ってきた。僕は彼らの作るルールは、芸人の戒律を侵しているとかなり前から思っていました。
──この本の中には、たけしさんのフライデー襲撃事件の話も出てきます。あの事件は、マスコミが反省する重要なきっかけだったと書かれていました。また、小室哲哉さんのスキャンダルを報じた時に、小室さんが引退してしまったことで、世間から文春に対して批判が殺到したというお話もありました。意外とそういう世間からの批判を文春が気にしていることがうかがえます。
博士:たけし事件の時は間違いなく行き過ぎた取材がありました。そして、暴力で報復したたけしさんとたけし軍団が法の下に裁かれたということもまた事実です。
そのあたりの事情は、『たけし事件:怒りと響き』(太田出版)という本で、何があり何が問題だったのか総括されています。写真誌がいかに衰退していったか、こういうものを読んで受け継がないかぎり、また同じことが起こると思います。
一方の小室哲哉さんは文春砲によって引退しました(※)。芸能人には引退するという選択肢があります。僕は松本さんの報道を見て、松本さんはこれを機に引退を選ぶと思いました。松本さんは様々なメディアで、「2、3年の内に引退する」と公言していたからです。
※週刊文春は2018年に、作曲家で音楽プロデューサー、小室哲哉氏の不倫疑惑をスクープした。妻のKEIKO氏(2021年に離婚)の闘病中に、知り合いの看護師の女性と自宅で過ごしていたという内容。
松本さんはすでに余生に困らないだけ稼いだし、島田紳助さんはスキャンダルが出た時に、引退することでプライベートまで追いかけられることがなくなりました。
──芸能人にとって、プライバシーはあってないようなものです。
博士:芸能人はみなし公人です。表にいる間は追われるものです。今の時代、みんなカメラを持っていますから、どこで盗撮されてもおかしくない。芸人にはそういう覚悟が必要で、僕は著名人と指名手配犯は同じだと思う。