「働く場所が少ない」だけ、なのか?
そんな立場で、わたしは昨年来ずっと、広島がなぜ転出超過ワースト1なのだろうか、ということを考えてきた。地元の行政や経済界を中心に、若者が働く場所が少ないのが理由だとする声がよく聞かれるが、果たしてそれが原因なのだろうか。そんな単純な話なのだろうか、と。おりしも、コロナ禍を経てリモートワークが当たり前になり、場所を問わずに働く選択肢もグッと増えて、地方移住はトレンドですらあるのに。
県外で暮らす広島出身者に、広島に帰らない理由を聞くと、その答えはさまざまだ。「東京の方が楽しいから」「もうこっちに生活があってわざわざ戻る理由もない」などという人が圧倒的に多いのだが、あれこれ話していると、いろんな思いが吐露されていく。「広島ってものすごく保守的」「男尊女卑の空気がある」「『平和』ばっかり言うけどあんまり平和じゃない」…なるほどな、と思う。
広島では、いつでもどこでも「平和」という言葉が耳に飛び込んでくる。言わずもがなではあるが、人類で初めて人々の頭上に核兵器を投下された広島は、長崎とともに、核兵器廃絶のない世界を訴えてきたまちだ。
広島市役所・広島市議会の敷地内には「国際平和文化都市ひろしま」の標語を大きく掲げ、世界遺産原爆ドームを含む一帯を「平和記念公園」と名付け、原爆被害の実態を展示した施設は「平和記念資料館」と呼ぶ。そして、1945年8月6日に何が起きたのかを学ぶ授業を「平和学習」と呼ぶ。