ユーコン川を漕ぐ筆者(2023年8月23日撮影)

 ユーコン川に行ってきた。叶えられるとは思っていなかった夢だった。ユーコン川はカヌーイスト野田知佑ファンにとっては聖地。野田さんはその著書で、日本の川はダムで寸断されていることを憂いていたエッセイストだ。嘆くだけではなく、日本各地で川を開発から守る運動を支援し続けた。

 野田さんの著作を愛読していた筆者は、1994年まで約1年放浪した中南米で、滔々と流れる透き通る川に遭遇し、野田さんが漕いだ川とはこういうものかと腹落ち。帰国後、徳島県木頭村(きとうそん:現・那賀町)の住民と議会と行政が、国の細川内(ほそごうち)ダム計画に反対し、「清流を守りたい」と運動していると知って応援した。それがこの「川から考える日本」の連載にもつながっている。

 前置きはともかく、ユーコン川旅の実現のため、「Yukon、river、trip」と検索して見つけたのが、8日(実質6日)で300キロメートルを漕ぎ下るアドベンチャーツアーだった。海辺の町に暮らし、シーカヤック歴2年。舟の種類は違うが漕げる!と連れ合いと共に申し込んだ。

旅の出発点。2人乗りのカナディアンカヌー5隻に9人の1週間分の水と食料、荷物を積んで出発!(2023年8月21日筆者撮影)

一番の不安、“トイレ”の入り口にクマ・スプレー

 ユーコン川はカナダ・ユーコン準州から流れ出て、アメリカのアラスカ州でベーリング海に出る。私たちが漕いだ300キロメートル区間はカナダ側だ。

 テント泊も野糞も気にならないが、唯一の心配はクマだった。就寝中と野にお尻をさらしている時にクマが来たらどうすればいいのか。その不安は1日目、州都ホワイトホースの宿に集合してのミーティングでやや解消された。