日本の治水は、洪水時に川にどれだけ水が流れるかという最大の流量を想定し、この流量に対してどれだけをダムで貯めるかを決め、残りの水量については堤防を高くして海まで安全に流すという単純な考えをとってきた。

 しかし、7月1カ月分の雨量がわずか9時間程度で降った「令和2(2020)年7月球磨川豪雨」のように、桁外れの豪雨が珍しくなくなり、これまでのような「想定外」という言い訳は通用しなくなっている。同様の被害が繰り返されないためには、どのような災害が起きていたのか、自分事として考える住民の力が必要だ。

 そのことはこのJBpressに〈熊本・球磨川の災害の影に隠される瀬戸石ダムの「構造令」違反問題〉や、〈3年前の豪雨球磨川水害の教訓、現行のハザードマップだけでは命を守れない〉でも書いてきた。

 そして、球磨川豪雨ではもう一つ、国や熊本県が見過ごしてきた問題があった。橋梁が「ダム化」したのち、決壊する問題だ。

「ダム化」により決壊した、国の有形文化財、第四橋梁

 2020年7月に起きた球磨川豪雨では、本流で10本、支流で7本の道路橋が流出、鉄道橋も計3本、合計20本もの橋が流された。

 その最上流にかかるのが、くま川鉄道の「球磨川第四橋梁」(以後、第四橋梁)だ。大正12(1923)年にでき、国の有形文化財にも登録された。石積みの橋脚、赤い鉄橋で、多くの鉄道ファンにも親しまれてきた。やはりこの橋も豪雨で流された。

豪雨により流出したくま川鉄道の第四橋梁豪雨により流出したくま川鉄道の第四橋梁。球磨川と川辺川の合流付近に架かっている=2020年7月14日撮影(写真:時事通信社)

 そして、この美しかった橋が、残念ながら浸水面積を拡大させ、鉄砲水を発生させたのではないかとの見方がある。「3年前の豪雨球磨川水害の教訓、現行のハザードマップだけでは命を守れない」で紹介した「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」(略称:手渡す会)の見解だ。