人吉市九日町/大工町(筆者撮影)

水害に見舞われた人吉市で揺れる新たな問題

 国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化の時代が来た」と表現した。

 異常気象で誰でも被災しかねない。日本でも豪雨や台風被害が甚大化し、頻発化している。鬼怒川(茨城県)で2015年、小本川(岩手県)で2016年、筑後川(福岡県)で2017、2020、2023年、小田川(岡山県)で2018年、千曲川(長野県)で2019年、球磨川(熊本県)で2020年、今年も雄物川(秋田県)ほか各地で浸水被害が起きている。

 住居を失った被災者が、避難所から仮設住宅やみなし仮設に移り、自宅再建が難しい被災者には、自治体が災害公営住宅を建設、提供することも一般化した。

 しかし、賢明なのは、今後新たに建てる住宅は、災害が想定される地域をできる限り避けることではないか。

 国土交通省は2021年に「水災害リスクを踏まえた防災まちづくりのガイドライン」を発表。自治体が条例で災害危険区域を指定したり、特定都市河川浸水被害対策法で浸水被害防止区域を指定し、住居の建築を制限したりすることを勧めている。

「うちは逆なんですよね。浸水想定区域に建てていく」と、熊本県人吉市が進める災害公営住宅について6月19日の人吉市議会で指摘したのは、大塚則男市議だ。

 同市は、3年前の「令和2年7月豪雨」による球磨川などの氾濫で甚大な浸水被害を受けたが、現在、市内2地区で、土地建物提案型(プロポーザル方式)で災害公営住宅の整備事業を進めている。

 そのどちらも浸水区域に位置しているのだ。

 プロボーザル方式とは、民間業者が土地を見つけてその売買価格と建設工期などを提案し、最高得点を得た業者を選んで整備させて、市が買い取る方式だ。

 市内2地区のうち、先行する相良地区は3年前に90センチ浸水した。ここでは広々とした道路に面する市有地に1メートル(m)盛土して、120戸分の災害公営住宅を建てる提案が採用された。現在建設中で、今年11月には完成する(下写真)。

人吉市相良地区に建設中の災害公営住宅(7月12日筆者撮影)