もともと正月のお祭り気分から普通の生活に戻るための儀式だった「ひめはじめ」にはいろいろな意味がある。

「比目始め」と書いて正月のかゆや飯を食べる日。

「妃目始め」は正月の紅・お歯黒・針仕事のし始めの日。

「女伎始め」は、1月2日に初めて衣服を縫い始める日。

「姫糊始め」は女性が洗濯や張物を始める日。

「火水始め」は、台所で「火水始め」はその年に初めて火や水を使い釜に水を入れて初火を焚いて炊事をし始める日。

「日見始め」は太陽を初めて拝む日。

「飛馬始め」と書いて馬に乗り始める日。

「姫飯始め」は、姫飯(ひめいい)を食べる日、など諸説がある。

『和名抄』では「非レ米非レ粥之義」の「非(ヒ)レ米(メ)」の音をヒメとし飯のこととある。

 江戸時代は初夢と同様に正月2日の夜の交会を「姫始め」といった。

 その年最初の「姫あそび」が本義で『日本書紀』には、「御間城入彦はや、おのが命(お)を、穢(し)せむと、ぬすまく知らに、“姫なそび”すも」という歌がある。

 この「姫なそび」は「姫あそび」の意で、「淫事に耽る」ことを指す。

 年明け最初の濡れ事は「秘め始め」や「姫始め」の字をあてるのが一般的だが、それは、「姫遊び」が「秘め遊び」を本意とすることによる。

 隠語大辞典によれば【姫始:ひめはじめ】とは年始最初の性交をいふ、とある。

 江戸時代後期の国学者・斎藤彦麿が記した古来の風俗、古言古歌について記した『傍廂(かたびさし)』によれば、

「初春の“姫はじめ”は諸説まちまちなれども、むかしより世俗の云ひ来れる男女交合の始なり」

「年毎の正月の始めに“ひめはじめ”といふ事仮名暦にある・・・。大方は男女交通の始めとは思ふめれど親子兄弟の中にてはつつましさにさともえいはぬは好色淫奔の心を恥づればなるべし」

 と古来より、その年初めの「男女の営み」の意が、「秘め始め」であると疏明している。