「子供を産んでからは女性として見てもらえず、夫が性交渉を避け続ける」
「妻が性交を拒み、求めに応じてくれないが外での性交は病気が怖い」
こういったケースは珍しいことではない。
だが民法770条1項の項目の一つ「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には、病気や老齢などの理由から肉体関係の維持を重視しない当事者間の合意がある、といった状況ではない限り、婚姻後、長年にわたりセックスがないことは、離婚の理由に該当する、という。
また、婚姻前に性的興奮や衝動がないことを告知しなかった夫は信義則に反しているため、離婚が認められたというケースもある。
それは夫婦どちらかの一方的な性行為の拒否が愛情の喪失を示すものとし、また、性的に不能であることを婚姻の前に隠していると、それは離婚原因として認められるというものである。
さらには、肉体関係の拒否に正当な理由がなく、婚姻関係が破綻した場合、100万円を超える慰謝料請求が認められた事例も実際にはあるようだ。
健康増進、長寿を得る「射精しない性行為」
男と女が互いに肌を合わせることによって情愛が深まり互いの信頼が増すというのは今も昔も変わりはない。
では、江戸時代、房事の頻度はどのくらいが理想的といわれたのか。
江戸時代の本草学者、儒学者である貝原益軒(1630-1714)は、実体験に基づき健康法を解説した一般向けの生活指南書『養生訓』に、夜の営みの理想とされる回数が示されている。
それは「平人の大法」(一般的な基準)によると「年二十ノ者は四日に一たび泄(もら)す」と20歳の男は4日に1回。
30歳は8日に1回、40歳は16日に1回、50歳は20日に1回。そして齢(よわい)60に達したら房事は控えるべきとある。
しかし、もし体力が盛んで性欲が抑えきれないようなら、月に一度は交接してもよいとある。
そして、また「六十者精を閉じて漏らもらさず」とあるように、より、健康的な性的な営みは「射精は控える」ことで性交をしても、射精しなければ老齢になろうとも房事は問題がないと『養生訓』は示す。