バリデーションスタディを割愛する危うさ。一方・・・
最後に筆者の個人的な感想を記す。
現在、数多くのヘルスケアアプリが開発されているが、それらはバリデーションをとっていないものが多い(というよりも、効果立証もされていないものも多い)。
本来であれば、本研究のように、バリデーションのとれた質問票で、バリデーションのとれたシステムで、実施率をバリデーションし、さらに前向き臨床研究により効果の立証を行うべきである。そういった意味では、これが「正」である。ゆるぎない「正」である。
しかしながら、これを行うには膨大な時間が必要となる。そして、ITはものすごいスピードで進歩する。バリデーションスタディを実施しているうちに新しい技術がどんどん世に出てくる。
事実、海外ではウェアラブルを利用したADL(日常生活動作)測定といった研究もすすんでいると耳にする。
以前記事にした「様々ながん種の転移性患者にタブレット型電子患者日誌を導入することで生存期間を延長~ITはがん医療を変える?~ ASCO2017&JAMA」では、「時代バイアス」が生じると記した。この研究の電子患者日誌(ePRO)の担い手は、キオスク端末やWebベースだったが、現在はスマートフォンを中心としたアプリの時代である。正のデータがわかる頃には、技術革新が起こりかねない。
どこまでバリデーションをとりますか?
いま、必要なのはバリデーションをとらなくとも問題ないことをバリデーションする必要なのかもしれない。
※この記事に利益相反はありません。
可知 健太
東邦大学大学院 理科学研究科 生物分子科学専攻修了後、商社を経て、オンコロジー領域の臨床開発に携わる。2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、責任者を務める。一方で、医師主導治験のモニタリング業務に携わる。理学修士。免疫学専門。
*本稿は、がん患者さん・ご家族、がん医療に関わる全ての方に対して、がんの臨床試験(治験)・臨床研究を含む有益ながん医療情報を一般の方々にもわかるような形で発信する情報サイト「オンコロ」の提供記事です。