(文:可知 健太)
昨今、IoT(Internet of Things)のヘルスケア分野への応用は活発化されており、プライマリーケア(循環器領域、内分泌領域、眼科領域など)については積極的な開発、導入がなされている。
世界を見渡せば、がん領域でもパーソナルコンピューター(PC)、キオスク端末、タブレットやスマートフォンを用いたエレクトロニカル・ペイシェント・レポーティッド・アウトカム(電子患者日誌等; ePRO; イープロ)を臨床に応用する動きがみられ、去年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2016)でも、インターネットを介した経過観察アプリケーション(MOOVCARE™)が進行肺がん患者の生存期間を延長するという第3相試験結果が発表された一方、上記研究も症例数が少ないことが指摘されていた。
(参考)アプリはがん医療をサポートできる?アプリ導入で肺がん患者の生存期間が延長ASCO2016(オンコロニュース170712)
そして、今年6月に開催されたの米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2017)では、プレナリーセッション(最も重要な演題)の1つとして、日常的に化学療法を受けている転移性固形がん患者を776名を対象に、ePROを使用して12症状を報告した時の影響を検討する前向き研究結果が発表され、こちらも生存期間を延長する結果となった。
(参考)様々ながん種の転移性患者にタブレット型電子患者日誌を導入することで生存期間を延長~ITはがん医療を変える?~ ASCO2017&JAMA(オンコロニュース170808)
アジア初 インターネットを介したがんQOL研究始動
このような機運において、日本のがん医療におけるIoT導入は遅れがちであることは明白である。
そのような中、7月27日から7月29日に開催された日本臨床腫瘍学会にて、転移性乳がん患者におけるComputer-based Health Evaluation System(CHES;チェス)を用いたQOL(生活の質)評価の有用性を検討するパイロット研究(UMIN000023250)結果が、神戸市立医療センター中央市民病院の木川雄一郎氏によって発表された。