1つは、システムバリデーション。これは、文字通りシステムが正常に動作するかの検証作業である。

 もう1つは、患者が一定の割合以上で使用するかのバリデーション(検証)である。

 今回、木川氏らが発表した研究は、まさに「バリデーションスタディ」となり、研究目的は「転移乳癌患者を対象とし、長期にわたるHRQOL(QOLと同義)を電子媒体で、高いコンプライアンス(実施率)を保ちながら施行できることを確認する」とされている。

 要するに、「転移性乳がん患者にCHESを使用してもらい、長い間継続的に使用し続けることができるか?」を検証したのだ。

 参加したのは、神戸市立医療センター中央市民病院に通院する16名の転移性乳がん患者。勿論、携帯型タブレット端末もしくはPCを所有しており、自身にて操作可能な患者に限られた。

 これらの患者に、CHESの入力手法をトレーニングを実施、その後3か月間毎週CHESによりEORTC QLQ-C30(30問のQOL質問票)を入力を依頼した。16名の患者の年齢は38歳~70歳。年齢の中央値は58歳であり、1名は家族が代わりに入力したとのこと。なお、通院時などにCHESの入力を促すことはしなかったとのこと。

 肝心な3か月間の入力順守率の中央値は84.6%であり、もともと検討していた基準をクリアし、データ収集のためのバリデーション(検証)は立証されたといえる。

 しかしながら、16人中8人は入力順守率が8割以上であるが、残りの8人は入力の順守率が8割を切った。順守率が悪かったか理由は、入力忘れ3人、病状悪化4人、デバイスの不具合が1人であったとであり、さらなる改善が求められる。

 一方、CHES使用期間中に一定以上QOLが低下した患者(Minimally Important Difference;MID)は50%であり、一定以上QOL低下するまでの期間の中央値は30日であったとのこと。(今回の試験の目的はあくまでもバリデーションであり、患者はQOLを入力するが医師側は介入していないことに注意)