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東京女子医科大学 放射線腫瘍科 教授の唐澤久美子さん。

(文:小島あゆみ)

 東京女子医科大学 放射線腫瘍科 教授の唐澤久美子さんは数か月前に自ら乳がんを発見し、現在も治療を続けています。第1回では、発見から検査、治療選択、そして副作用に苦しんだ術前化学療法について語っていただきました。第2回では、その後の治療、がん患者となってわかったこと、これからの目標を伺います。

第1回記事:「患者さんはもっと伝えて、医療者はもっと訴えに敏感に」

予想していたこととはいえ、副作用は日常生活を妨げる

 唐澤さんが受けた術前化学療法はパクリタキセルやドセタキセルといった抗がん剤でした。薬への反応が強い体質のため、薬疹や下痢・腹痛などの強い副作用が出て、入院も経験しました。

 これらの薬の副作用には脱毛もあります。唐澤さんの場合、術前化学療法を始めてから3週間ほどで頭髪をはじめとする体中の毛が抜け始め、抜けたまつげが目に入りゴロゴロしたといいます。「がんの専門医として患者さんの脱毛はたくさん診てきましたし、いったん抜けても数か月後には生えてきて、やがて元のように戻ることも知っています。

 髪が少なくなれば洗髪が簡単で、ブローやセットもしなくていいし、ウイッグを被るだけで簡単でいいと思っていました。ですが、実際に経験してみるとやっぱり嫌なものですね」と唐澤さんは打ち明けます。

 見慣れた自分のヘアスタイルが変わると、人がどう見ているかとても気になりました。「今は何とか耐えていますが、それでも本人は違和感満載です」。ウイッグは頻繁に手入れしなければならず、思った以上に時間とお金と手間がかかることにも予想外でした。

 良かった点は、「自分が担当している患者さんのウイッグ着用はほぼ100%見破れるようになり、患者さんの辛さを共有できるようになったこと」だったそうです。