ここでいうComputer-based Health Evaluation System(CHES)とは、EORTCというヨーロッパを拠点としてがん治療や臨床研究を実施する組織が提唱し、そのシステムバリデーションを構築したパーソナルコンピューター(PC)ベースの健康評価プラットフォーム(システム)となる。

 EORTCはQLQ-C30など数多くのQOL調査票を開発している。すべての調査票は英語で開発されるが、日本語対応として言語検証(linguistic validation*)されたものも数多くリリースされている。しかしながら、いずれも紙ベースでの調査票であった。ゆえに、今回、日本語用として開発されたCHESは、アジアで初めての電子患者日誌(ePRO)となる。

*言語検証(linguistic validation):単に、英語を日本語に翻訳しても、実診療に即していない翻訳となる場合が多々ある。そうなると、本来取得したい回答が得られないことがあるため、翻訳が的を得ているかを検証する必要がある。この検証過程を、言語検証(linguistic validation)といい、実際に一定数の患者に意見聴取を行うことが多い。

まずは患者が継続使用できるかが初めの一歩 ~少しずつ進むIoT研究~

 そもそもQOL評価を患者から取得する意義は、医療者評価と患者の主観評価に乖離があるからである。しかしながら、現状のQOL評価の取得は患者の通院時に限られており、医師からすると通院時以外のQOLについてはブラックボックスに包まれている。そういった意味で、電子患者日誌(ePRO)を用いて定期的にQOLを入力し、それを遠隔でトラッキングする意義はある可能性がある。事実、上述通り、仕組みは違えど米国や欧州では生存期間を延長するケースも報告された。

 さて、電子患者日誌(ePRO)を研究や臨床に活用するにはどういったことが必要であろうか?

「生存が伸びた」「QOLが改善した」といった最終結果は勿論であるが、その最終結果を得るために臨床試験を行う必要があり、さらに臨床試験を行うためには、2つのバリデーション(検証)が必要がある。