(2)2023年露朝首脳会談
さて、北朝鮮としては軍事技術の供与を渋り、核実験を阻もうとする中国への不満は高まっていたとみられる。そこへロシアが接近してきた。
2023年9月12日、ボストチヌイ宇宙基地でロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書の首脳会談が開催された。
ロシアが軍事偵察衛星の開発援助と食糧支援を行う代わりに、北朝鮮がソ連時代の弾薬の備蓄を提供することを中心に会談が行われたとされる。
クレムリンは同首脳会談の冒頭約20秒間の映像を公開した。
その中で、金正恩氏は、「ロシアは主権と安全を守るための、覇権主義勢力に対する神聖な戦いに立ち上がった」とし、「我々はプーチン大統領とロシア指導部の決定を常に支持し、帝国主義との戦いで共に戦っていく」とウクライナ侵攻を続けるロシアを支持すると伝えた。
ロシア国営テレビの映像によると、金正恩氏は会談前に、北朝鮮はロシアとの2国間関係を「最優先事項」にすると記者団に述べていた。
筆者は、この時に北朝鮮はロシアの被保護国なったと見ている。
その1か月後の10月13日、米ホワイトハウスの高官が、北朝鮮がコンテナ1000個以上にあたる弾薬などの軍事物資をロシアに供与したことを発表した。
また、10月26日、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、北朝鮮が軍事装備品や弾薬をロシアに提供したことが確認されたとして、日米韓3か国の外相は強く非難する声明を発表した。
同声明の中で日米韓3か国の外相は、北朝鮮からロシアへの軍事装備品や弾薬の提供が複数回確認されたとしたうえで、ロシアの侵略戦争による人的被害を著しく増大させることになると強く非難した。
また、北朝鮮は見返りとして軍事能力を向上させるための支援を求めていると指摘し、ロシアから核・弾道ミサイル関連技術が移転される可能性を深く懸念するとした。
2024年5月7日、ウクライナ検察当局は、2023年12月下旬から2024年2月下旬までにロシアが発射した北朝鮮製の弾道ミサイル約50発のうち、回収できた21発の残骸を調査したと発表した。
それによると、約半数が予定軌道を外れて空中で爆発したため破片は回収されなかったとし、失敗率は高いとの認識を示した。
この発射弾数は北朝鮮がロシアに約50発の弾道ミサイルを輸送したとする情報と一致している。