(2)核実験に反対する中国

 金正恩総書記は最高指導者に就任してからのこの10年、核開発と、核の運搬手段であるミサイル開発をいわば「車の両輪」として加速してきた。

 北朝鮮は2024年10月31日、最新のICBM「火星19型」を発射した。

 報道によれば、ミサイルは86分間飛行し、高度7687.5キロ、距離1001.2キロを飛行したという。

 北朝鮮がこのようなミサイルを誘導し、大気圏に再突入する核弾頭を保護する能力には疑問が残るものの、他の最新型ICBMと同様に米国のほぼ全域を攻撃できる射程距離を実証した。

 朝鮮中央通信によると、発射に立ち会った金総書記は「新型ICBMは核兵器の開発と製造において我々が覇権を握っていることを世界に証明した」と語った。

 さて、北朝鮮は2017年9月以来となる7回目の核実験にいつ踏み切るのか、関係国の警戒と監視が強まっている。

(3)筆者コメント

 韓国政府の高官は2022年5月25日、「プンゲリにある核実験場とは異なる場所でここ数週間で複数回にわたって、核の起爆装置の作動実験を行っていることが探知された」と明らかにした。

 このほか、韓国の情報機関・国家情報院も、「核実験場での準備はすべて終わり、実施のタイミングだけを見計らっている段階だ」という見方を示した。

 今回の核実験の目的は、核兵器の「小型化」「軽量化」である。

 2021年1月に公表された北朝鮮の「国防5か年計画」には、ミサイルに複数の弾頭を積む「多弾頭化」や、短距離弾道ミサイルなどで局地的な攻撃を行うための「戦術核兵器」の開発が含まれている。

 これらの実現には核の「小型化」・「軽量化」が不可欠である。

 今、北朝鮮の核実験を阻止できるのは中国だけであると筆者は見ている。

 中国指導部には、北朝鮮の核開発が進めば日韓も核兵器を持とうとするのではないかという「核ドミノ」への懸念があるとされる。

 前回2017年9月に核実験が強行された際には、国連安全保障理事会が北朝鮮に対する制裁決議を全会一致で可決した。その際には、中国は米英仏と足並みをそろえたのである。

 さて、北朝鮮の7回目の核実験に対する中国の対応が注目される。

 ミサイルの発射実験は黙認するが、核実験は絶対に許さないというのが、習近平政権の一貫した立場であるとされる。

 しかし、筆者は、中国は北朝鮮のロシアへの派兵と同じように干渉しない姿勢を取ると見ている。

 理由は、今、北東アジアには日米韓3か国と中ロ朝が対立するいわゆる「新冷戦」のような対立構造が構築されている。

 米国との覇権争いをしつつ台湾統一を優先事項とする習近平主席にとって、米国とのパワーバランスを取るためには、ロシア・北朝鮮との連携が必須であるからである。