(4)筆者コメント
一連の安保理決議に基づく対北朝鮮制裁措置にもかかわらず、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し続けており、かつ核実験の準備を進めている。
また、軍部隊をロシアへは派遣するという暴挙に出た。今、国際社会は北朝鮮をコントロールするすべを失っている。
さて、朝鮮半島の非核化は過去のものとなってしまった。
米民主党は、2024年8月18日に公表した2024年米大統領選挙向けの政策綱領から「北朝鮮の非核化」への言及を削除した。
また、2024年7月8日に発表された共和党の政策綱領でも、「北朝鮮の非核化」に言及していない。
今、米政府内では、達成不可能と見られる北朝鮮の完全な非核化から、軍備管理措置による北朝鮮の核能力の管理に焦点が徐々に移っていると見るべきであろう。
復権を目指すドナルド・トランプ前大統領は在職中、金正恩総書記との直接会談で核問題を打開しようとした。
一方、ジョー・バイデン大統領は日韓との連携を強化して北朝鮮への圧力を強めてきた。
核兵器を温存したまま国連制裁の解除を勝ち取るのが、金正恩氏の思惑である。
トランプ氏が返り咲けば、米本土を射程に収めるICBM(大陸間弾道ミサイル)の廃棄を材料に取引を持ちかける可能性がある。
しかし、核兵器を保有する北朝鮮が中短距離ミサイルを持ち続ければ、日本と韓国にとっては深刻な脅威であり続ける。日本政府は北朝鮮のミサイルの全廃を米国へ働きかけなければならない。