再エネで英国の電力高は解消するのか?

 ここで英国の電気料金の動きを確認したい。

 コロナショック前の2019年を基準(100)とする指数で確認すると、直近2024年4-6月期の電気料金は家庭用(CPIベースの電気料金)で151.6と、ピーク時だった23年1-3月期(194.1)に比べると安定しているが、それでもまだ高水準である。企業用(PPIベース)も同様に高止まりしている。

【図表2 電気料金の推移】

(出所)ONS(出所)ONS

 労働党は再エネシフトを最優先させる方針だが、一方で再エネ発電は天候や地形に左右されるため、本質的には不安定な電源だ。

 また英国だけの問題ではないが、洋上風力発電を中心に、送配電網の整備が遅れていることが世界的な課題となっている。再エネシフトを促そうにも、様々なハードルがあるため、電気料金の安定には直ぐつながらない。

 反面で、原子力発電はベースロード電源として適しているが、その増設には当然ながら時間も費用もかかる。労働党政権はGBEと前保守党政権の下で設立されたグレートブリティッシュニュークリア(GBN)を連携させ、小型モジュール炉(SMR)の導入を進める方針のようだが、いずれにしてもその稼働までには相応の時間を要する。

 こう考えていくと、英国はガス火力を戦略的に用いる必要がありそうだ。少なくともガス火力を捨てるという選択肢は取りえないのが実情だろうが、むしろ労働党政権は新規投資を抑制する観点からガス採掘企業に対する課税を強化する方針を掲げるなど、チグハグな対応を見せている。

 こうした路線を、今後も労働党政権は踏襲するのだろうか。