中道左派だが、原子力発電に前向きな労働党政権

 今年7月の総選挙での歴史的大勝を受けて14年ぶりに政権を奪取した労働党は、元来、それまで政権を率いた保守党以上に脱炭素化を重視する。

 現に、キア・スターマー首相は石油・ガス分野での新たな投資を抑制する一方で、再エネの普及を重視する。労働党としても、EUの中道左派政権とは異なり、原子力発電の活用について前向きだ。

 EUでは2022年2月に生じたロシア発のエネルギーショック以降、原子力発電に対する見直しが進んでいる。同年10月に中道左派政権から中道右派政権に交代したスウェーデンは、その典型的な国だと言えよう。

 同様に、中道左派政党が政権を担うドイツは23年4月に脱原発を実現。スペインでも原発の利用に慎重な姿勢である。

 こうした大陸の中道左派政権に比べると、英国の労働党政権のエネルギー政策は、原子力発電の活用についても前向きだという点で一線を画している。

 一方で、英国が北海油田を有しているにもかかわらず、労働党は天然ガスの利用に関しては慎重な立場を堅持しており、エネルギー政策の中心にはあくまで再エネ発電を据える方針を掲げている。

 スターマー政権は2024年中に、再エネシフトの推進と原子力発電の活用を目的とする公営エネルギー会社「グレートブリティッシュエナジー」(GBE)を設立する方針である。

 スターマー政権の目玉政策の一つだが、このGBEの下で英国のエネルギー供給が安定化し、スタグフレーション(景気停滞と物価高進の併存)が和らぐかは不明だ。