親密で特別な関係

 この間も、ポスコと日鉄は長年、「親密で特別な関係」(ポスコ関係者)だった。

 その陰には、いつも朴泰俊氏がいた。経営には直接関与しなかったが、日鉄とや日本との関係には常に気を配っていた。

「日本の多くの恩人がいてポスコがあることを忘れてはいけない」

 筆者は何度もこう話すのを聞いたことがある。

 朴泰俊氏とポスコ、日鉄との関係を象徴するような場面も何度か見た。
例えば、今から20年ほど前のことだ。

 ソウル市内の個人事務所で雑談をしていたら、朴泰俊氏が急にこう話し始めた。

「そういえば、日鉄(当時は新日鉄)の社長も交代するんだね」

「えっ・・・まだ、そういう発表はなかったようですが・・・」

「あっ、そうか? でも、本人が今、君が座っているソファに座って『退任することになりました』と話したよ。報告に来てくれたんだ。一昨日だったかな」

「はぁー!それは間違いないですね…!」

 ちなみに、最近、韓国メディアで再び「朴泰俊」が大きく何度か紹介された。

 最近の、Z世代(韓国ではMZ世代ということが多い)の間で、韓国の大企業の創業者を紹介するユーチューブ動画がブームになっているという内容だ。

 現代創業者の鄭周永(チョン・ジュヨン)氏、サムスン創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)氏などに次いで、朴泰俊氏を紹介する動画も人気だという。

 朴泰俊氏が、日鉄の社長人事を教えてくれた(?)頃、日鉄とポスコは、株式の持ち合い拡大を発表した。