日本製鉄による米国の大手鉄鋼メーカー「USスチール」の買収計画が、いよいよ山場に差し掛かっています。バイデン大統領が難色を示し、労組も強く反対するなか、この4月12日にはUSスチールの臨時株主総会が開かれ、売却の是非が諮られるのです。粗鋼生産量で見ると、日本製鉄は世界第3位。買収が完了すれば、世界第2位となります。では、相手のUSスチールとは、どんな企業なのでしょうか。買収内容にも触れながら、専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。
USスチール株の買取価格は4割上乗せ
「USスチールが米国で成長するために一番役に立てるのが日本製鉄だと確信している」「米国では今でも4000人近い従業員が(日本製鉄の在米)子会社にいる。米国で倒産した会社も立て直してきた。われわれは米国に根づいている鉄鋼会社だ」
この4月1日に新しく日本製鉄の社長となった今井正氏は就任に際して朝日新聞などの取材に応じ、このように語りました。日本製鉄こそがUSスチールに貢献できるとの強い意志を示したかたちです。
日本製鉄がUSスチールの買収を決めたと発表したのは、昨年12月18日のことでした。発表によると、日本製鉄は米国の子会社であるNIPPON STEEL NORTH AMERICA, INC.を通じてUSスチールを合併するなどした後、日本製鉄の100%子会社とします。買収価格は、USスチール株の12月18日終値=1株39.33ドルに40%を上乗せした1株55ドル。日本円に換算すると、総額で2兆円規模となります。