2024年3月中旬、いわゆる「TikTok禁止法案」が米下院で可決された(写真:CFoto/アフロ)

中国企業のバイトダンス(ByteDance)が運営する「TikTok」(ティックトック)は若い世代に大人気の動画投稿アプリです。ユーザーは世界で15億人以上もいます。ところが、その人気アプリの使用を禁止する機運が米国で急速に高まってきました。

米下院で3月中旬、バイトダンスが180日以内にTikTokを中国以外の国の企業に売却しなければ、米国でのTikTok使用を禁止するという法案、いわゆる「TikTok禁止法案」が可決されたのです。ユーザーの情報が中国当局に利用されるという安全保障上の懸念が理由ですが、TikTokに親しんだ世代からは「TikTokを守れ」という声が湧き上がっています。

いったい、何が起きているのでしょうか。専門記者グループのフロントラインプレスがやさしく解説します。

フロントラインプレス

TikTok、世界で15億人が利用

 SNSマーケティング分析のWe are SocialとMeltwaterが公表している「グローバル・デジタルレポート2024」によると、SNSのユーザーは世界で50億400万人、全人口の62.3%に達しています。1人当たりの1日の利用時間は平均で2時間23分。世界はSNSでつながっていると言っても過言ではありません。

 利用者が最も多いのはFacebookの30億4900万人。以下、YouTube(24億9100万人)、WhatsAppとInstagram(ともに20億人)と続き、5番目がTikTok(15億6000万人)です。

出所:「グローバル・デジタルレポート2024」(We are Social / Meltwater)
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 バイトダンス(中国名:北京字節跳動科技)が運営するTikTokは世界150カ国以上で利用でき、米国には1億7000万人のユーザーがいるとされています。TikTokは短い動画が主流で、歌やダンス、ペット、スポーツなどのほか、おもしろ動画も多数投稿されています。最近では政治や経済に関するものも盛んに投稿されるようになってきました。メディア企業がニュース動画を投稿するケースも増えています。

 ユーザーの大半は10代〜20代とされています。日本の若い世代でもTikTokに触れたことのない人は、ほとんどいないかもしれません。

 そのTikTokを規制する法案が、米下院で可決されたのは3月13日のことです。

 法案は、正式には「外国敵対勢力が管理するアプリから米国人を保護する法案」という名前です。バイトダンスや関連企業が開発・提供するアプリやサービスが米国の安全保障を脅かす存在になっているとし、成立から180日以内にこれらのアプリが米国内で提供されたり、更新されたりすることを禁止する内容になっています。

 ただ、180日以内に中国以外の国の企業に売却された場合は、引き続き、サービスの提供は認められます。

 下院への法案提出から採決までわずか8日間というスピード審議の結果、法案は賛成352、反対65という大差で可決されました。法案は共和党の保守派が推進しているとされてきましたが、賛成票の半分近くは民主党議員によるものです。

 表現の自由への懸念を示す民主党議員もいましたが、多くの議員は「中国が管理するアプリに米国の若者を委ねていいのか」「中国はTikTokを通じて米国民を監視している」といった懸念を共有していました。