経営権保護でも共闘

 猛烈な買収攻勢で世界の鉄鋼業界の再編に動いていたアルセロール・ミタルは両社にとって脅威だった。

「経営権保護」が最大の目的だった。日鉄は、ポスコ株を5%超まで買い増したのだ。

 同時に両社は、半製品の相互供給や、資源再生のための合弁会社を韓国に設立することなど、戦略的提携の拡大でも合意した。

 もちろん、提携交渉や意思決定をしたのは当時の両社の経営陣だったが、ポスコ名誉会長としてにらみを利かせていた朴泰俊氏の存在も大きかった。

 この「戦略的提携深化」(両社の当時の表現)を最後に、両社の関係は次第に「普通の関係」に変化していく。

 特に、2011年に朴泰俊氏が死去してからは、「何となくぎくしゃくし始めた」(ポスコ関係者)。

 2012年に、日鉄は「方向性電磁鋼板」の製造技術をポスコが不正な手段で取得したとして提訴した。

 訴訟は日鉄側の勝訴で終わったが、両社間にしこりが残った。

 当時の両社の幹部の中には「話し合いで解決する余地はあった」と残念がる声もあった。

 朴泰俊氏が亡くなり、ポスコの経営陣も世代交代が進んだ。