適切なマネジメントを行うための「土台」を自ら破壊した
マネジメントで最も重要なことは、指揮するメンバーの労力を最大の成果へとつなげることに他なりません。
上司は、部下に指示して業務させる権限を持っています。部下に求められるのは指示通りの業務遂行であり、それが果たされたのに十分な成果が得られないとしたら指示が間違っていたことになります。すなわち、指示した上司の責任です。
そのため、マネジメントする側の評価は、組織が出した成果にひもづきます。兵庫県はいま、県議会議員86名全員が斎藤知事に辞職を求める事態に陥りました。そして、すでに2名もの尊い命が失われています。知事に従い、兵庫県の職員は懸命に業務にあたってきたのだとしても、その結果がこの状況です。
斎藤知事はこれまでも繰り返し、自身の振る舞いは「適切だった」と主張してきました。しかし、結果は到底受け入れられないものです。これまでの振る舞い、行われてきた指示、対応が不適切だったことは結果が証明しているのです。
マネジメント側が適切な対応をするためには、事実は何かを把握することが不可欠です。しかし、知事は自動車進入禁止エリアであるという事実を把握しておらず、「通れないのはどうしてなの?」と職員に説明を求めて確認することなく叱責しました。
その他、数々のパワハラなどに関する告発文書をめぐってもうそ八百だと説明し、事実検証が不十分なまま公益通報には当たらないと決めつけ、告発した元職員を処分した疑いが示されています。
公益通報制度は、表に出にくい事実を確認するために有用な仕組みです。それなのに告発された側の知事が自ら告発者を処分してしまったことで、見えづらい事実を確認するための仕組みを機能不全にしてしまいました。適切なマネジメントを行うための土台を自ら破壊したことになります。
また、マネジメント側が指揮するメンバーの労力を最大の成果へとつなげる上で大切なことがもう一つあります。メンバーが働きやすい環境を構築することです。
事実を把握し、適切な指示が出せたとしても、メンバーが働きづらい環境に置かれていては能力を十分に発揮できません。いまの兵庫県庁は、到底職員が働きやすい環境ではないはずです。