「選挙運動期間」というヘンテコリンな設定

 戸別訪問ができませんから、有権者は候補者に近づけません。後援会に入らねば無理です。それは一般の有権者にはハードルが高すぎます。冒頭に、「ダメ効果に注意を払うことすらできない」と言ったのはそういう理由です。政治家への無関心の大きな原因のひとつです。

 実に不可解なのは、「政治活動期間」と「選挙運動期間」が法的に区別されていることです。

 例えば、議会政治の長い伝統を誇る英国の下院選挙では、選挙の集票活動とはすなわち「日常の政治活動である」という考えですから、この活動期間の区分をするという発想すらありません。日々の活動を材料に人々は投票するのですから。アメリカにも英国にも、ドイツにも、カナダにも「選挙運動期間」などというものは存在しません。

 でも日本のルール集が「基本的にはたやすく買収される連中を警戒する」目線でできている以上、こういう区分をつくるのはそれとして合理的になるのです。

 なぜならば、選挙運動期間と仕切ってしまえば、警察はその期間だけ捜査と管理と警戒をしていればよいからです。まったくもってわかりやすい「取締法」の発想です。有権者目線ではありません。官憲の都合なのです。

 そう考えると、ペットボトルのキャップ、戸別訪問の禁止、謎の「選挙運動期間」の設定といったヘンテコリンな事例以外にもある、また別の基本問題のモヤモヤの正体もわかってきます。

 ひとつは、1億人以上の有権者を抱えて、世界ナンバー4の経済大国の100兆円を超える予算を差配するメンバー(議員)を選ぶのに、衆議院なら12日、参議院でも17日しか選挙運動ができないことです。

 取り締まる期間が短ければ短いほど、お国にとってはありがたいからです。でも選挙をする側からすれば、選挙の前、選挙中の活動への規制が厳しすぎるから、訴えが浸透する前に選挙が終わってしまうということになります。