公職選挙法を改正できるのは日本の国会議員だけ

 英国では、日本のようなポスターも少なく、選挙カーも見られません。インターネットを中心にしているかと思いきや、基本は候補者が街へ出て、1軒ずつ戸別訪問をして有権者と対話をして、直接のやり取りを通じて自分を知ってもらうという活動が中心です。戸別訪問の制限は「夜9時まで」というだけです。そして、前回の下院選挙の投票率は69%です。日本は衆院で56%でした。

 民主政治は人間がやるものですから、さまざまな未成熟や腐敗があります。英国もそうした経験から、贈収賄禁止法や利権登録などのルールをつくってきました。

 しかし、そこにあるのは、失敗を重ねながら有権者と政治家が相互の信頼を基盤に、対話と議論を通じて、人々が当事者意識を失わず政治的な決定を下すシステムを、「共に」成熟させていくという理念です。

 有権者への基本的信頼をもたない、ひたすら政治活動を「取り締まる」発想でつくられたルール集で選挙と政治をやり過ごすなら、私たちの政治はいつまでも成熟することはないでしょう。

 公職選挙法を改正できるのは日本の国会議員だけです。彼らは現行ルールで勝ち上がり議席を得ました。はたして自分たちを勝たせたルール集を、自分たちで変えることができるでしょうか? 政治不信のもうひとつの理由がここにあります。

半径5メートルのフェイク論「これ、全部フェイクです」』(岡田憲治著、東洋経済新報社)