共産党との連携のあり方など、野党には温度差がある。写真は連合のメーデー中央大会に出席した国民民主党の玉木代表(左)と立憲民主党の泉代表(写真:共同通信社)

 渡る世間はフェイクばかり——情報過多の時代、もっともらしい文章や画像、映像を簡単につくる生成AIまで登場し、何が正しくて、何がフェイクなのか、ますますわかりにくくなっています。世にまかり通り数々のフェイク、本当のところはどうなのか。政治学者の岡田憲治氏(専修大学法学部教授)が切り込んでいく。

 第4回目は野党共闘について。自民・公明による政権を打倒するには、野党共闘による「一騎打ち」に持ち込む必要があるのに、野党はなぜまとまらないのか。岡田氏は、フェイクに囚われているからだ主張する。

(*)本稿は『半径5メートルのフェイク論「これ、全部フェイクです」』(岡田憲治著、東洋経済新報社)の一部を抜粋・再編集したものです。

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もはや与野党ですら基本的政策にはさほどの違いはない

 与党の支持率がジリ貧的に下がっても、野党の支持率は上がりません。これは、この十数年の日本の国政のトレンドです。代わりに「支持政党なし」が50%を超えて、メディアは定番の「政治不信」と見出しをつけて、多くの有権者が「もういいよ。なんでも」となります。人間の良質なエネルギーが眠りつつあります。

 野党もいろいろで、支持率が上がらない理由もいろいろです。でも、その理由のひとつに確実にあるのが、「当選者1人の小選挙区が300近くあるのに、野党が乱立したら票が割れて、やる前から勝敗わかるでしょ? 気の利いた小学生でもわかりますよ」という失望です。

 つまり野党共闘を通じた「一騎打ち構造の形成」もできないなら、与党に反省を求める有権者としては、もう「どこも支持できる政党がない」と回答したくなります。

 当の野党は「どうして野党統一候補をガチンコで各選挙区にぶつけないのか?」という質問に、あの手垢のついた決まり文句を返します。「政策が異なる政党とは共闘できない」というアレです。あたかも「クリスチャンと仏教徒は結婚できない」と言っているかのような口ぶりです。

 かつて民主党が維新の会と合併して、民進党という政党をつくって、かなり野党がまとまって、都民ファーストの小池百合子東京都知事を中心に「政権交代!」と機運が高まったときがありました。でも、最後まで当時の民進党代表がこだわったのが、共産党を仲間に入れるか否かでした。

「共産党は『日米安保廃棄』と言っているから共闘を組むことはできない。そんな共闘は『野合』であって、それでは支持者を裏切ることになるし、政権交代を目指すにおいても無責任の誹りを免れない」と共闘に難色を示し続けました。一騎打ちの構造をつくられると、与党はお先真っ暗でしたから、「政策の一致なきものは野合である」と、やはり定番で被せて来ます。

 しかし、冷戦下のイデオロギー対立が過去のものとなった今、現在では与野党ですら基本的政策にはさほどの違いはありません。

 かつて立憲民主党の枝野前代表は「我々は30年前の自民党で言うと宏池会に近い」といった趣旨の発言をしていました。違いが目立つのは、21世紀の今日に至って、「夫婦別姓は家庭を壊す」などと世界中に説明できない妄言で、ことごとく民法改正を潰している自民党右派ぐらいです。