衆院予算委員会の場で加藤財務相(左)と話す石破首相(写真:つのだよしお/アフロ)衆院予算委員会の場で加藤財務相(左)と話す石破首相(写真:つのだよしお/アフロ)

(渡辺 喜美:元金融担当相、元みんなの党代表)

「べらぼうめ」になった石破総理

「日本文化の真髄は、江戸時代の吉原で生まれた男女間の短期的な無限の執着と長期的な無限の諦めが表裏一体となった概念である。これを『いき』という」(政治学者・永井陽之助)

 永井教授は哲学者・九鬼周造「『いき』の構造」を解説する中で、「男と女」を「政治家と権力」に置き換えて話した。そして、『いき」の反対概念は何かを問うた。

「短期的な無限の執着だけの人間は『ヤボ』と呼ばれる」

 NHK大河ドラマ「べらぼう」は、『いき』と『ヤボ』の両極の間にある浮世(憂き世)に生きる人々と蔦屋重三郎の吉原創生物語を描く。江戸風駄洒落の地口も面白い。

「べらぼう」は本来、褒め言葉ではなく人を罵り嘲る時に使う言葉。総理になる前から悪口を言われていた石破さんは、総理になると更に「べらぼうめ」になった。「正論の異端者」が変節したからだろう。

 しかし、ここにきて各社世論調査の内閣支持率は下げ止まり、上昇しているものもある。やはり、期待値の低かったトランプ大統領との会談が思いのほか上手くいったこと、自民・立憲・維新のそれぞれが内部対立を抱えながら政局が収まっていることなどが大きい。

 また、国民民主党との年収の壁をめぐる合意が決裂して2カ月。前半国会の最大の難関である来年度予算案と税制関連法案は、自民・公明と維新の会がすったもんだの交渉の末、私立高の生徒への就学支援金は所得制限なしで2026年度から45.7万円に引き上げることなどで合意し、成立のメドがついた。維新内部の対立に伴い、調整に手間取ったか。

 石破さんと前原誠二さんは元々気心知れた間柄だし、鉄道オタクという趣味も一緒。一度は連立を組んでみたいという相思相愛の関係だった。維新は、石破内閣にとって「ありがた山の寒ガラス」だろう。

 維新の会の吉村代表は大阪万博を成功させたいし、自民は大阪では壊滅状態なので政治的な軋轢は少ない。一方、大阪が一大地盤の公明は先の選挙で維新にボロ負け。面白いはずがない。公明は選挙摩擦の少ない国民民主を何とか取り込もうと躍起になったが、あとの祭りだ。