フォルクスワーゲンをはじめとしたドイツの自動車メーカーは中国市場重視の姿勢を戦明認している(写真:AP/アフロ)フォルクスワーゲンをはじめとしたドイツの自動車メーカーは中国市場重視の姿勢を鮮明にしている(写真:AP/アフロ)
  • 欧州委員会は中国とのデリスキリングを進めようとしているが、その道のりは簡単ではない。
  • 事実、ドイツの自動車メーカーは対中投資を減らしてはおらず、イタリアも中国企業の誘致に躍起だ。
  • それだけ欧州と中国の経済的なつながりが深いということだが、欧州委員会はデリスキングをどう進めていくのだろうか。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は、中国との間で「デリスキング」(リスクを軽減しながら経済関係を維持すること)を進めようと躍起になっている。こうした要請を受けて、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、2023年7月に同国として初となる「対中戦略」を発表。中国との間でデリスキングを進める方針を内外に示した。

 一方で、それが容易ではないことを物語るのが、ドイツの企業の対応だ。

 例えば、ドイツの対中投資の動きを確認すると、直近2024年4-6月期は名目GDP(国内総生産)の0.13%程度だった。確かに過去の水準に比べると、ドイツの対中投資は減っているが、「対中戦略」を発表して以降は減っておらず、底堅く推移している。

【図表1 ドイツの対中投資】

ドイツの対中投資(注)4四半期後方移動平均(出所)ドイツ連銀

 こうした対中投資の動きからは、ドイツ企業が中国との間でデリスキングを進めている様相は窺えない。

 確かにドイツ企業の多くが、中国事業の見直しを図っていること自体は事実だ。市場の成熟や民族系企業の成長で、中国でかつてほどの高収益が見込めなくなったためである。だからといって、ドイツ企業にとって中国事業が重要なことに変化はない。

 むしろ、中国との関係を再び重視している産業もある。その代表的な存在が自動車工業だ。