ロシアでは新築集合住宅の価格が上昇していた(写真:ロイター/アフロ)ロシアでは新築集合住宅の価格が上昇していた(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアの代表的な株価指標であるRTS指数が急落した。今回の下げをけん引したのは国営石油会社であるロスネフチや、大手行の一つであるモスクワ信用銀行、通信大手ロステレコム、不動産大手PIKといった企業である。その中でも、PIKの株価低迷はロシアでの住宅バブル終焉を物語っている可能性がある。今回の株価下落は何を映し出しているのだろうか。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ロシアの代表的な株価指標であるRTS指数が8月後半に急落し、その後も軟調な展開が続いている(図表1)。

 8月中旬までRTS指数は1000ポイント前後でもみ合っていたが、8月19日の相場の終値が977.34と1000ポイントを下回った後は下落が続き、9月3日の終値では898.36と900ポイントを割り込むと、その後、下落が一服した。

【図表1 RTS指数】

(注)週次 (出所)モスクワ取引所(注)週次 (出所)モスクワ取引所
拡大画像表示

 もともとロシアの株式市場は参加者が限定的である。加えて、ウクライナ侵攻をきっかけとして外国人投資家の多くが退出したため、参加者はさらに少なくなっている。

 そのため商いが薄く振れやすいわけだが、それまでじり高が続いたRTS指数が侵攻直後の2022年4月以来の低水準に落ち込んだことは、いったいどのような意味を持つのか。

 ロシアではウクライナとの戦争の長期化で経済運営に対する統制が強まったことから、株価の形成に市場原理がきちんと反映されているか、定かではない。一方で、統制が強化されたなら、極端な株安など生じるはずがない。

 統制ゆえにこの程度の下落で済んでいるのか、あるいは統制にもかかわらずここまで下落しているのか、評価は難しい。

 なお、ロシアを代表する経済紙コメルサントは株価の下げをけん引している企業として、国営石油会社であるロスネフチや、大手行の一つであるモスクワ信用銀行、通信大手ロステレコム、不動産大手PIK、SNS大手VKの名前を挙げている。

 一方で、資源採掘大手のメケルや国営ガス会社ガスプロムの株価は、比較的底堅く推移している。

 ロスネフチの株価の不振は、ロシアの原油輸出が停滞している事実と整合的である。ロシアは中国やインド向けに原油を輸出しているが、米欧日による制裁を受けて、国際価格よりも低い価格での輸出を余儀なくされている。

 さらに、最大の輸出先である中国の需要が停滞しているため、ロシアの原油輸出もまたそれほど増えていない模様である。

 他方で、不動産大手PIKの株価の低迷は、ロシアにおける住宅バブルの終焉を物語っている可能性がある。