金利優遇ローンの打ち切りで急上昇した住宅金利

 ロシアの都市部の住宅供給は、基本的に集合住宅で行われるという特徴がある。ロシアの新築集合住宅の価格はコロナショックがあった2020年以降、ウクライナ侵攻による経済の下押しにもかかわらず一本調子で上昇している(図表2)。

【図表2 新築集合住宅価格とPIK社の株価】

(出所)ロシア統計局、モスクワ取引所(出所)ロシア統計局、モスクワ取引所
拡大画像表示

 まず、コロナショックに伴うロシア中銀の金融緩和強化がロシアの住宅需要を刺激した。あわせて、ロシア政府が新築住宅に限定して金利優遇ローンを提供したことも住宅需要を刺激することにつながった。

 ウクライナ侵攻以降、中銀は金融引き締めに転じたが、政府は金利優遇ローンの提供を続けたため、住宅需要は強いままだった。

 住宅市場の活況を反映し、PIK社の株価は2020年から21年前半にかけて急騰した。その後、ウクライナ侵攻もあって株価は急落するが、22年後半以降は住宅価格の上昇に歩調を合わせつつ、底堅く上昇してきた。

 ところが、今年7月1日をもって政府は金利優遇ローンの提供を打ち切った。そのことが、PIK社の株価急落につながったと考えられる。

 優遇ローンの金利水準は主に8%であり、政策金利(当時は16%)のちょうど半分の水準とかなり低かった。そのため優遇ローンの打ち切りに伴って住宅金利は急上昇し、住宅需要を圧迫することになった。

 ロシアの住宅市場は急速に冷え込んでいると推察され、そのことをPIK社の株価の動きは反映しているものと位置づけられる。