株価低迷が映し出すロシア経済の構造問題

 他方で、ロシアの株価の低迷は、ロシアの企業が市場を通じて資金を調達することの限界を物語っているとも言えそうだ。

 いわゆる上げ相場でなければ、企業は公募増資が困難となる。そうなると、引受先の投資家を限定した私募増資による資金調達が視野に入るが、ロシアの場合、その主な引受先は政府系企業や政府そのものになるだろう。

 つまるところ、これは企業の国有化を意味する。そして国有化が進むことは、経済の統制がさらに強まることを意味する。

 あるいは、中国の投資家による出資を仰ぐかもしれない。そうなればそうなったで、ロシアの企業は中国の強い影響下に置かれることになる。いずれにせよ、ロシアの株価低迷は、ロシア経済の構造的な不振を映し出している。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

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【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部副主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)がある。