(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)
ウクライナが、ロシア領内クルスク州に越境攻撃を開始してから2週間が経過しました。
2022年のロシアによる全面侵攻開始時、北東方面からウクライナの首都キーウを目指したロシア軍はスーミ市を攻撃しました。そのスーミ市に近いロシア領内の町スジャを中心として、ウクライナ軍は徐々に支配領域を広げています。戦況は、今のところウクライナ軍にとって順調と言えそうです。また、8月22日には、新たにブリャンスク州にも越境攻撃を開始したと報じられています。
越境攻撃が開始された時点では主に東部でウクライナ軍の苦境が伝えられていたこともあり、越境を疑問視し、その意図が理解できないという声も多く聞かれました。しかし、軍事的には十分過ぎるほど妥当性があるため、筆者は昨年からその可能性を考えていました。
根本的に戦略を変更するとしたら、ずいぶん前に、自分で言及しながらあえりないと書いた、ロシア領内侵攻制圧による被占領地との交換だろう
— 数多久遠 新刊『有事 台湾海峡』8/9発売! (@kuon_amata) November 6, 2023
厳重に防御されているヘルソン南部や、東部を攻めるよりは、ベルゴロドなどをとる方が(軍事的には)容易
ただ、政治的には難しい https://t.co/r3D1kBPsTi
ゼレンシキー(ウクライナ語の表記を踏襲します)大統領は、この越境攻撃の理由をスーミ州の防衛の観点から語っていますが、これは多分に政治的な思惑があっての発言だと思われます。
そこで、ウクライナ軍が行っている軍事行動を中心に、この越境攻撃の目的を探り、この戦争の展望を考えてみたいと思います。