【目的6】アメリカによる制約の解除

 既に述べたように、エスカレーションを恐れるアメリカは、ウクライナに越境攻撃を行わないよう圧力をかけていました。また、アメリカ製兵器、特に長射程兵器のロシア領内への使用にも制限をかけています。

 今回、ウクライナはアメリカに対しても事前通告することなしに越境攻撃を実施しました。そのため、攻撃の直後には、アメリカ政府内にはかなりの動揺が走ったようです。

 ですが、越境攻撃の経過が順調なこと、ロシアがレッドラインだとしていたロシア領内への越境攻撃後も、ロシアが強硬な姿勢をとることができずにいることもあってか、越境攻撃自体だけでなく、装甲車両などのアメリカ製兵器をロシア領内で使用することを認めています。8月21日にはATACMSやHIMARSの使用も確認されているため、一部長射程兵器の使用に関しても制限が解除されている模様です。

 ウクライナは、アメリカが課した制約を、あえて犯すことで、その解除をもぎ取った形です。

 越境を追認しなければ、ウクライナ支援に積極的なヨーロッパの国から非難を受ける上、バイデン大統領としては、現在進行中の大統領選挙において、彼の後継者と言えるカマラ・ハリス氏への支持に悪影響が出るとの判断だったと思われます。

 ウクライナとしては、越境作戦が順調に推移しさえすれば、バイデン大統領も追認せざるを得ないと分析した上での作戦決行だったのでしょう。