【目的1】支配領域拡大と領土交換

 既にXのポストのように、昨年(2023年)、ウクライナ南部での反攻が実施された際にも、ベルゴロドなどロシア領内への越境攻撃を実施した方が軍事的には容易なため、筆者はそうした戦略にも言及していました。

 実際、南部での反攻は、ロシア軍が強力な陣地を構築している地域に攻撃を行ったため、各国が供与した強力な機甲戦力がありながら頓挫しています。

 今回、ウクライナ軍にも少なくない被害があるとの情報がありますが、最初の3日間で塹壕陣地を突破した上で、スジャに迫り、以降はスジャを完全に支配下に収め、その周辺に徐々に支配領域を拡大しています。

 クルスク市や、市の西にある原発を奪取するなどの可能性も囁かれましたが、越境から4日目以降は、無理な攻撃は行わず、少数の歩兵による偵察に砲撃や長射程兵器によるピンポイント攻撃を組み合わせ、効率的な戦闘を行うことで支配領域を拡大しています。

 この越境による支配領域の拡大は、やはり将来の交渉における領土交換を目指したものである可能性が高いでしょう。

 陣地化された土地を奪還することは困難ですが、陣地化が不十分で、低練度の徴集兵が守っていたクルスクの前線を突破することは比較的容易であったようです。