エネルギー価格の高騰に苦しめられているドイツ(写真:AP/アフロ)
  • 米ドル建て名目GDPで日本を抜き、世界第3位の経済大国になったドイツ。だが、名目GDPが膨らんだ要因は物価高と為替要因で、経済成長自体はマイナスだ。
  • ユーロ導入以降、ドイツは輸出主導の経済成長を謳歌してきたが、高インフレに伴うコスト増やエネルギー価格の高止まりを受けて、輸出の国際競争力が低下している。
  • ドイツに抜かれた日本も円安に苦しんでいるが、成長率自体はプラスと健闘している。日本は今の円安を好機として、今一度、輸出競争力の向上に努めるべきだ。

 ドイツ連邦統計局は1月15日、2023年のGDP(国内総生産)統計の速報値を発表した。これによると、ドイツの2023年の実質GDPは前年比0.3%減と、コロナショックがあった2020年以来のマイナス成長となった。一方で、名目GDPは同6.3%増と、2022年(7.2%増)から勢いが鈍化したものの、引き続き高い伸びである。

 これに先立ち、国際通貨基金(IMF)が2023年10月の「世界経済見通し」で、2023年におけるドイツの米ドル建て名目GDPが日本を抜き、ドイツが世界3番目の経済大国になったとの予測を発表していた。

 今回のドイツのGDP統計を受けて、ドル建て名目GDPで測ったドイツの経済規模が2023年に日本を抜いたことは確実となった(図表1)。

【図表1 ドイツと日本のドル建て名目GDP】

(注)日本の数字はIMFによる予測値(出所)ドイツ連邦統計局およびIMF
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 もっとも、このことはドイツ経済にとって明るい内容であることを意味しない。

 2023年のドイツの米ドル建て名目GDPの成長率を「成長要因」(実質GDPの増減)と「価格要因」(GDP価格指数の変動)、「為替要因」(対ドルレートの変動)で寄与度分解を施すと、その増加につながった主因は「価格要因」であることが分かる(図表2)。

 次いで、「為替要因」もドイツのドル建て名目GDPを膨らませる方向に働いている。この間、ユーロの対米ドルレートは3%ほどユーロ高ドル安が進んだ影響だ。

 反面、「成長要因」はわずかだがマイナス寄与となっている。ドイツの実質GDPが0.3%減のマイナス成長となったためであり、ドイツ経済の厳しさがうかがえる。

【図表2 2023年の米ドル建て名目GDP増減の寄与度分解】

(注)日本の数字はIMFによる予測値 (出所)ドイツ連邦統計局およびIMF
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 つまるところ、高インフレ下での低成長という典型的なスタグフレーションの影響を受けて、ドイツ経済の米ドル建て名目GDPが膨らんだということだ。したがって、ドイツの米ドル建て名目GDPが膨らんだことをして、ドイツ経済が好調であるという評価は成立しない。

 皮肉にも、むしろ不調だからこそドイツ経済は膨らんだわけだ。