- 2023年5月の国政選挙で再選したトルコのエルドアン大統領。2024年3月には、ロシアのプーチン大統領の再選も確実視されている。
- 権威主義体制を強める両国では、必ずしも経済運営はうまくいっていないが、それでも国民の支持を集めるのはなぜか。
- その背景には、権力に都合よく改変された選挙制度もさることながら、変革よりも強い指導者と現状維持を望む国民の存在も大きい。
(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
2023年5月、トルコで国政選挙が行われ、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が再選した。エルドアン大統領は2003年に首相に就任して以降、一貫してトルコの指導者として君臨し続けている。
2014年には大統領に転出し、すでに2期の任期を満了、2023年の大統領選に再選したことで、2028年5月までの5年間を務める。
5月の国政選挙は、エルドアン大統領が誕生して以降、最も政権交代に近づいた選挙だった。
2018年以降の経済運営の失敗に伴うリラ相場の暴落(図表1)や、2023年3月に生じた大地震での対応の拙さなどを受けて、エルドアン大統領の支持率は大きく低下し、事前の調査では野党候補のケマル・クルチダルオール氏の優勢が伝えられていたほどだ。
【図表1 トルコリラの対米ドルレート】
最終的に決選投票までもつれ込んだが、結局、エルドアン大統領が52.2%の得票を得て、再選することになった。2018年以降の経済運営の失敗は明らかであるものの、有権者の過半が引き続きエルドアン大統領を信認したことになる。
政権交代によってトルコの経済運営が正常化することを期待した有権者や投資家の願いは、またしても届かなかった。
エルドアン大統領の下でトルコは権威主義体制を強めていったが、その友好国であるロシアは、トルコ以上に権威主義体制の性格が強いことで知られる。
ロシアもまた、2024年3月に大統領選を控えているが、ウラジーミル・プーチン大統領が再選して、さらに2030年まで6年間の任期を務めることが、ほぼ確実視されている状況だ。
プーチン大統領もまた、20年以上、ロシアで政権を担い続けている。