ロシア産ガスを運ぶパイプラインのパイプ(写真:DPA/共同通信イメージズ)
  • 2023年4-6月期をボトムに反発している国際原油価格。主にロシアがOPEC諸国と協調した減産によるものだが、ロシア財政にポジティブな影響を与えている。
  • 7-9月期の連邦歳入は前年比28.5%増だが、牽引したのは石油ガス収入ではなく、所得税などの一般税収。歳入に対する原油価格の上昇分はこれから訪れる。
  • もっとも、原油高はロシア財政にポジティブだが、軍事費という形で浪費されており、原油高でなければ戦争の継続も国内の経済対策も打つことができない。

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 2022年2月に生じたロシアのウクライナ侵攻に伴って急上昇した国際原油価格(ブレント原油価格)。同年4-6月期をピークに下落に転じ、安定したが、2023年4-6月期をボトムに反発し、7-9月期の平均水準はバレル当たり86.7米ドルと、4-6月期の78.1米ドルからおおよそ11%上昇している(図表1)。

【図表1 ブレント原油価格】

(出所)米エネルギー情報局

 この間の国際原油価格の上昇は、主にロシアがサウジアラビアなど他の産油国と協調して原油の減産に取り組んだことで実現した。いわゆるOPECプラスは、10月4日に開催した第50回共同閣僚監視委員会(JMMC)でも、6月4日の第35回閣僚級会合で合意した2024年末までの減産方針を維持することを再確認したところだ。

ロシア中部ハンティ・マンシ自治管区の原油くみ出しポンプ。原油価格の上昇がなければ、戦争の継続もできない状況(写真:タス=共同)

 他方で、ロシア産原油の価格(ウラル原油価格)は、いわゆるG7とオーストラリアによる制裁を受けて国際原油価格を下回って推移している。ただ、ロシアによる追加の自主減産に加えて、原油市況そのものの上昇もあり、ロシア産原油価格も上昇。バレル当たり60米ドルという天井を突破している。

 ロシアが原油高の演出に躍起になっている最大の理由は、歳入の確保に他ならない。

 ロシアの連邦歳入のおおよそ3割が、資源企業に対する課税(石油ガス収入)であることは広く知られた事実だ。ウクライナとの戦争で膨張する軍事費と国内の経済対策費を賄うために、ロシアは原油高を演出して歳入を確保する必要があるのだ。

 とりわけロシアは2024年3月に大統領選を控えている。これを見据え、9月に発表された2024年の予算案は歳出が2023年から26%増える計画となった。

 大企業に対する増税もあり、石油ガス収入以外の収入が大幅に増えるため、財政赤字はわずかだと政府は説明する。そうはいっても、石油ガス収入が増えるに越したことはないだろう。

 それでは、2023年7-9月期に進んだ原油高は、ロシアの歳入をどれだけ押し上げたのだろうか。ロシア財務省の統計より、その様子を概観してみたい。