・いろんな考えがありますが、弱者が強者に勝つには9回の方がいいと思います。(千葉県立君津商業高、金城歩睦監督)

・高校野球のゴールが甲子園で、甲子園が暑いから7回制にするというのなら、その前にドーム球場で9回やることを考えればいいと思います。(福島成蹊高、鈴木翔馬監督)

・9回の方がいいです。変えられるところはほかにあります。地方大会では、千葉なら7月はじまりを6月にするとか、できることをやって、最後の最後ではないかと思います。ただ、この暑さで応援してくださる吹奏楽、チアや保護者のことも考えるべきだとは思います。(千葉県立四街道高、古谷健監督)

どちらにも一長一短が…

・9回ある野球が好きです。終盤の展開の面白さがあります。ただ、7回でやれば5、6、7回が終盤になると思うので、違った面白さはあるかもしれません。(日大習志野高、吉岡眞之介監督)

・7回制は半分賛成です。やっぱり長すぎるというか、2時間で終わらない試合もあるし。でも野球の文化は「3の倍数」とずっと言われてきたことを考えると半分反対です。それに、これは夏だけの問題じゃないですか。夏だけのためにルールを変える必要があるのか。夏は7回、それ以外は9回となると1年間のストーリーがなくなってしまいます。(千葉商大付属高、吉原拓監督)

慶應義塾高の森林貴彦監督(筆者撮影)
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 昨夏の甲子園を制した慶應義塾高の森林貴彦監督はこう語る。

「9回でやっていた身としては、戦術が変わるかなと思います。でも、それってちっちゃなことで、7回制は、高校野球を中心に、野球をどのように改革していくか、よりよい姿を求めていくかを考える一つの手段なのかな、と思います。だから前向きに考えています。

 100%賛成ではないですが、この夏の暑さとか選手のコンディションを見ていると必然の流れじゃないでしょうか。いずれ7回制になると予想して対応していきたいと思っています」

 指導者の気持ちは揺れているが、多くはそれでも受け止めざるを得ないと考えている。

 大事なのは<何のために「7回制」にするのか?>ということだろう。

 この改革が「聖地甲子園での大会」を存続するため、であってはならないだろう。「甲子園は絶対」ではない。そうではなくて「高校生が大好きな野球をする」環境を今後も維持していくために導入を検討すべきだ。「プレイヤーファースト」が大切だ。

 そして「高校野球の7回制」の議論は、ひとり高校野球だけのものではないだろう。小中学校で野球を始めた子供は高校を経て大学、社会人、独立リーグ、プロへと進んでいくのだ。

 アメリカでは18歳以下の選手の投球数、投球間隔を決めた「ピッチスマート」を2014年に導入した。それに先立って長期的で広範な調査を実施したが、その費用はMLBが負担した。医師も調査に協力し、科学的で客観的なルールができたが、アメリカ野球界は、少年野球からプロ野球までの総意として「ピッチスマート」を導入したのだ。

 高校野球選手はいずれ大学、社会人、プロ選手になるのだ。高校野球の「7回制」を導入するに際しては、プロアマ含めて野球界全体で議論を深める必要があるのではないか。野球界がみんなで高校野球、選手を守り育てていく、その姿勢が大事だろう。