常にアップグレードが施されているパトリオットミサイルの信頼性は高い(米陸軍のサイトより)

 ロシア軍はウクライナへの侵攻以来、2023年2月までに約5000発、2024年3月までの2年間に約8500発のミサイルをウクライナに撃ち込んでいる。

 これに対して、ウクライナ軍は米欧の防空ミサイルを運用して、それらを空中で撃破している。

 ロシアが発射しているミサイルは、北朝鮮と類似のもの、あるいは北朝鮮が開発し実験しているものと性能が似ている。

 したがって、ロシアのミサイル攻撃とウクライナのミサイル防衛の実戦を分析すれば、「北朝鮮と日米軍のミサイル防空戦が、実戦ではどのようになるのか」を概ね予想できる。

 以下、現実のロシアのミサイル攻撃とウクライナのミサイル防衛の実績から分かった「北朝鮮ミサイルの現実的脅威」について考察する。

1.北朝鮮:ミサイル射撃公表と韓国への恫喝

 北朝鮮は今年5月30日(2024年)、口径600ミリ超大型多連装ロケット砲18門で同時発射の射撃を行い、その映像を公開した。

 朝鮮中央通信によれば、「敵が軍事力使用を企図する場合には、いつでも、先制攻撃手段でより一層高度化した能力で臨戦態勢を維持するという意志を示すためのものである」という。

 その要領は、超大型ロケット砲大隊(中隊は6門編成となる)が統合火力指揮システムを運用して同時射撃を行い、ロケット砲は354キロ離れた島の標的に命中したとしている。

写真 北朝鮮による600ミリ多連装ロケット砲18門の同時発射

出典:朝鮮中央通信(5月31日)、600ミリ超大型ロケット砲兵区分隊の威力示威射撃に関する報道

 ここで北朝鮮が主張したいことは、以下のような点だろう。

「北朝鮮の直径600ミリのロケット砲とロシアの950ミリ『イスカンデルM』ミサイルと比較すると、北朝鮮のロケットはロシア製に近い威力と射程を持ち、それも4発を連続して発射できる」

「さらに、総合火力指揮システムを使った運用により、大隊18門が初弾同時、そして1基が4発連続して合計72発を発射し、約400キロ以内の韓国の重要目標に対して、GPS誘導により命中させることができる」

 ロシアがウクライナに撃ち込んでいるものと同じ飽和攻撃を見せつけているのである。

 このような方法で、北朝鮮が先制奇襲攻撃を行えば、韓国は多くを撃ち漏らし、多くの被害を受けるだろうと「威嚇」しているのである。