5.北朝鮮ミサイルの脅威と日本の防衛
ウクライナでの戦争から見た北朝鮮のミサイルの脅威と日本のミサイル防衛については、ウクライナのミサイル防空戦闘による撃墜率が、現実に参考になるのではないかと考えられる。
加えて、ミサイルの欠陥などを加味する必要もある。
日本に向けられる北朝鮮のミサイルの種類ごとの撃墜率について考察する。
巡航ミサイルについては、そのミサイルの飛翔経路や攻撃目標となる着弾地に、日本が保有する防空ミサイルを配備していれば、ほぼ100%の撃墜率になるであろう。
弾道ミサイルについては、攻撃目標となる着弾地付近に、パトリオットミサイル「PAC3」を配備していれば、ほぼ100%の撃墜率であろう。
この型のミサイルが配備されていれば、ミサイル防衛については安全であると言える。
ただし、射程範囲は配備地点から直径20~30キロの範囲内だけである。範囲外については、撃墜できない。
ウクライナには、高高度を飛翔する弾道ミサイルを撃墜できるミサイル、例えば「SM3」が供給されていない。
このため、実際にSM3ミサイルの実効性については、実験結果以外では不明である。
さらに、弾道ミサイルが軌道を変更する場合には、命中させられるかどうかも、依然不明である。
パトリオットミサイルが配備されていない地域では、SM3ミサイルによる撃墜に期待するしかない。
ところが、前述のように軌道を変更するミサイルが発射された場合、SM3でも対処することは難しくなる。
日本では、ミサイル防衛システムが配備されているところが、敵の弾道ミサイルに狙われると主張する人々がいるが、ウクライナでの戦争の教訓では、配備されているからこそ狙われないというのが現実である。
現にロシアは、弾道ミサイル攻撃では、飛翔中に撃墜されないように、パトリオットミサイルが配備されていないと思われる地域に向けて発射することが多くなっている。
最も撃墜しやすいのは、防空システムに向かって飛翔しているミサイルである。
したがって、ミサイル防空システムが設置されているところには、ミサイル攻撃は比較的されにくくなる。
日本は、北から南まで非常に長く、ミサイル防衛に穴もできる。
敵は、この穴を探し出して、そこを狙って攻撃してくるだろう。そのため、ミサイル防衛を重層的に準備しておくことが重要である。