北朝鮮「火星18」北朝鮮「火星18」(写真:KCNA/Newscom/アフロ)

月2回のペースで北朝鮮がミサイルを乱れ撃ちする理由

 ここ数年、北朝鮮がミサイル・ロケットの“乱れ撃ち”を加速させている。

 直近では5月27日に、軍事偵察衛星打ち上げ用のロケットを発射(不具合が生じたため自爆させ失敗)し、3日後の30日には、超大型放射砲(短距離弾道ミサイル)を試射。18基の移動式(トラック車載式)ランチャーを横一列に並べ、約365km先の洋上の小島を目標に斉射した。

5月30日に発射した超大型放射砲(写真:朝鮮中央通信ウェブサイトより)
超大型放射砲(短距離弾道ミサイル)を斉射した北朝鮮(写真:朝鮮中央通信ウェブサイトより)

 防衛省発表の「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」などによれば、同国の弾道ミサイルの発射回数は、2020、2021年の各4回に対し、2022年は31回に急増。2023年も18回で、2024年は巡航ミサイルも含め5月までに少なくとも13回、月平均2回以上のペースで打ち上げた計算だ。

 今年5月30日の試射に立ち会った北朝鮮の最高指導者、金正恩氏は「今日の威力示威射撃は、われわれに手出しすればどんな結果に直面するか、はっきり示す契機になるだろう」と断言。続けて「恐るべき威力を誇る、世界最強のわれわれの方式の戦争攻撃手段が厳格に準備されている」と強調した。「核兵器」を連想させるあたりは、蜜月の間柄であるロシアのプーチン大統領とウリ二つだ。

軍事偵察衛星打ち上げ用のロケットを発射した北朝鮮5月27日、軍事偵察衛星打ち上げ用のロケットを発射した北朝鮮(写真:AP/アフロ)

 ミサイル乱れ撃ちの理由の1つについて、朝鮮半島情勢に詳しい国際ジャーナリストはこう推測する。

「ウクライナ戦争や、ガザ紛争に絡む中東での武力衝突では、弾道ミサイルが多数使われ、武器が数少ない外貨獲得源の北朝鮮にとって、またとない儲け話と映っているはずだ。弾道ミサイルを欲しがっている国は多いので、プロモーション的な意味合いも込めている可能性が高い」

 スウェーデンのシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」発行の『イヤーブック2023』では、北朝鮮保有の核爆弾数は、2023年1月現在で30発と推定する。

 また英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の『ミリタリーバランス(2024年版)』によれば、核搭載可能なミサイル数は、最も射程距離の長い大陸間弾道ミサイル(ICBM。射程5500km以上)約17発を含む110発以上と推計。これに潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や巡航ミサイルなどが加わる。

北朝鮮の「火星15(ICBM)」北朝鮮の「火星15(ICBM)」(写真:朝鮮中央通信ウェブサイトより)

 現在、核保有国は米露中英仏、インド、パキスタン、イスラエル(ただし同国はノーコメント)、北朝鮮の9カ国で、通常戦力の充実も並行して行うのが普通だが、北朝鮮だけは例外で、戦車や軍艦、戦闘機など主力兵器の充実・近代化にはあまり力を入れないため陳腐化や老朽化が激しい。

 軍事費の大半を核・ミサイル開発に注ぎ込む「一点豪華主義」を貫くことで“金一族体制”の存続を図る戦略なのだろう。では、北朝鮮の通常戦力はどの程度なのか。

>>【表】数字で見る北朝鮮の軍事力(ほか写真全11枚)